貞観政要からの言葉

貞観政要からの言葉

 

「創業と守成、いずれが難きや。」貞観政要からの言葉である。

 

なかなか、政治を学ぶための教科書というものは得難い物です。

 

日本では徳川家康や北条政子などが貞観政要を学習したと伝えられています。

 

唐の治世を築き上げた太宗を巡る物語であるようです。

 

(貞観政要は、唐の史官である呉兢が編成したとされる太宗の言行録である)

 

『書経』と並んで、帝王学の原典とされてきたもう1冊の古典が、『貞観政要』です。

 

私も書経や大学・中庸といった本も勉強しなくてはならないと思いつつ・・・。なかなか。

 

 

太宗と魏徴とのやりとりなどやはりクオリティの高い生きる術のエッセンスがちりばめられています。

 

魏徴とはどういう男か、その一片を表すのにこの言葉が記されています。

 

人生意気に感ず

人生(じんせい) 意気(いき)に感(かん)

 

功名誰か復た論ぜん

功名(こうみょう) 誰(たれ)か復()た論(ろん)ぜん

 

魏徴(ぎちょう)「述懐」(『唐詩選』 巻一 五言古詩)

 

1「凡そ大事は皆小事よりおこる」

 

凡そ大事は皆小事より起こる。小事論ぜずんば、大事又将に教うべからざらんとす。

 

少しの気の緩みから国家も組織も解体していくものです。

しかし、小事に振り回されれば、また、組織は疲弊して、衰亡の道を歩みます。

何が重要で、何が気の緩みかと言う事を常にはっきりさせる事でしょうか。

これは、常に公平で公正であることを心がけ、自己の利益を追求しないことを硬く心に誓わなければ為りません。

 


2「国を治むると病を養うとは異なるなし」

 

国を治める時の心構えは、病気を治療するときの心掛けとまったく同じである。

 

『病人というのは快方に向かっているときこそ、いっそう用心して看護にあたらなければならない。つい油断して医者の指示を破るようなことがあれば、それこそ命取りになるであろう。』

これは、「創業と守成いずれが難きや」の問いの本質と同じ事でしょう。

企業にしてもそうですが、多少、状況が好転すると組織内の人間の気の緩みは高まります。

組織にとっては、一番危険な状況です。

企業の業績が少し上向くと、内部の人間はその成果の獲得に奔走するようになります。欲に目が眩むのです。

そして、組織内のより高い地位や給与の獲得に走り出します。

また、派閥を形成したり敵対分子の排除に走ったりして組織を硬直化又は衰退化させて行くのです。

3「変化して適応すべき」

 

広い天下のことであるから種々様々な事件に応じて変化して適応すべきだ。だから、多くの役人に任せて協議させ、宰相に対策を立てさせるべきである。

 

だから、政務は広く賢良に任せて、私は賢良たちの働きを見守るほうが間違いが少ない。法令が厳粛ならば誰が非を唱えるだろうか。

 

「大事は皆小事より起こる」といえども部下を信用できず、人民を信用できず、国王自ら全ての政務を行う事は出来ない。

例え重要な政務であろうと独りで決裁することはできないし、するべきでもない。

 

部下を信じられる体制造りが日頃から必要なのであって、それは、組織のトップの振る舞いが部下にとって信じるに足るものでなくてはならない。

結局はトップの資質そのものが問われるのであって、部下を信じられない環境は、トップの不明以外の何者でもない。




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